PROFILE

萩村 健

茶師・フィトテラピストJapanese Tea Taster & Blender / Phytotherapist


一服の茶を飲むとき、
人に何が起きているのか。

小学生の頃から、茶畑と茶工場が身近にありました。
三重県四日市市水沢。
茶をつくる人がいて、工場があり、季節になると茶の香りが町に広がる。
その土地で育ち、いまも茶に携わっています。

茶のなかで育つ

現在は、まるは茶業グループの代表として、契約栽培、仕入、加工、ブレンド、品質保証、輸出まで、日本茶の仕事に携わっています。

茶業に入って二十六年。

茶師の仕事は、茶を官能で見極め、選び、仕立て、ブレンドすることです。

外観、水色、香り、味、質感。
目の前の茶を五感で確かめ、品種、生育環境、摘採時期、製法など、その背景まで考える。

官能評価は、長い時間をかけて身体のなかに蓄積してきた、茶を見るための基準です。

その経験を土台に、いまは成分や抽出条件の言葉でも茶を記述しようとしています。
置き換えるのではなく、見える範囲を広げるために。

茶を凝視する。茶だけを凝視しない。

茶師として茶を見るときは、茶そのものに集中します。
香り、味、水色、形状。
その茶がどのようにつくられたのかを、一つひとつ見極めていく。

茶道の稽古では、同じ茶を扱っていても、見ているものが違います。
茶だけではなく、器があり、しつらえがあり、季節があり、所作があり、目の前に人がいる。
どれほど良い茶であっても、それだけで一服が成り立つわけではありません。

茶師としては、茶を凝視する。
茶席では、茶だけを凝視しない。

二十年以上、茶業と茶道の両方に身を置くなかで、茶そのものを見ることと、茶が人に届く場を見ること。その二つを行き来するようになりました。

文化から、植物へ

日本茶には、長い時間をかけて育まれてきた文化があります。
茶道、器、季節、所作、産地、製法。

そうした世界のなかで茶に向き合う一方で、やがて Camellia sinensis という一つの植物として茶を見ることにも関心を持つようになりました。

緑茶も、抹茶も、紅茶も、烏龍茶も、もとは同じ植物です。
栽培、摘採、加工、保存、そして淹れ方によって、香りも味も、含まれる成分も変わっていく。

文化の側から見ていた茶を植物として見直すことで、別の輪郭が現れてきます。

植物療法を学ぶなかで、茶についても、経験や伝承だけでなく、成分や身体との関係から考えるようになりました。

交わるところ

茶師として、茶を見極める。
茶道では、一服が生まれる場を見る。
植物療法からは、植物と身体の関係を考える。

いま関心があるのは、この三つが交わるところです。

三つの実践を行き来しながら、茶を飲む人の感覚や身体、その場での体験に目を向けています。

取り組むテーマは、大きく三つあります。

一つは、これまで培ってきた官能評価に加えて、成分や抽出条件の言葉でも日本茶を記述していくこと。

一つは、人に起きていることへの理解を、茶の選び方や仕立て方、淹れる、飲む、食べるといった日常の行為や、新しい活用へつなげていくこと。

そしてもう一つは、茶と植物療法の実践者、研究者や開発者が、それぞれの専門性を保ちながら対話し、実践や開発に取り組める場をつくることです。

科学で説明できる範囲を、茶の価値の限界にはしたくありません。

説明できることは、できるだけ丁寧に説明する。
まだ十分に分かっていないことは、不確かさも含めて伝える。
そして、季節や所作、人とともに茶を飲む時間のように、あえて数値に還元しないものは、そのまま残す。

その三つを混同しないことを大切にしています。

なぜそうなるのか

私の根にあるのは、「なぜそうなるのかを知りたい」という、ごく単純な疑問なのだと思います。

なぜ茶は覆いをすると旨味が増すのか。
なぜ葉の緑が濃くなるのか。
なぜある茶は香りが強く、ある茶はそうではないのか。
なぜ、人は茶を渋いと感じるのか。
なぜ、ある一服が心に残るのか。

長く茶に携わっていても、目の前で起きていることの理由を、すべて説明できるわけではありません。
けれど、物事には何かしらの理由がある。
そう考えると、一つずつ確かめたくなる。

植物が持つ働きにも、昔から惹かれてきました。
ハーブやアロマセラピーのように、植物が香りや成分を通して人に作用すること。食べることや飲むことと、身体の状態がつながっていること。
そうした関心が、茶を文化や嗜好品としてだけでなく、一つの植物として見直すことにもつながっています。

茶業、茶道、植物療法、そして科学。
最初から一つの道として選んだわけではありません。
ただ振り返ると、その根にはずっと、目の前で起きていることをそのまま受け取るだけではなく、なぜそうなるのかを知りたいという問いがあったのだと思います。

一服の茶を飲むとき、人に何が起きているのか。
それを知ることで、いつもの一服に、何が見えてくるのか。

知ることと、味わうこと。その間を行き来しながら、茶を研究し続けています。

再び一服の茶へ。

略歴・資格

萩村 健|Ken Hagimura

株式会社まるは茶業 代表取締役社長
株式会社MARUHA AGRI 代表取締役社長

茶師・AMPP認定メディカルフィトテラピスト
Japanese Tea Taster & Blender / AMPP-certified Medical Phytotherapist

三重県四日市市水沢に育つ。
茶業に二十六年間携わり、契約栽培、仕入、加工、ブレンド、品質保証、輸出など、日本茶の生産から流通まで幅広く経験。農業にも携わる。

2021年、全国茶業連合青年団 団長。
現在、伊勢茶スマート栽培協議会 会長。

JHTC HACCP Lead Instructor
FSPCA-trained Preventive Controls Qualified Individual (PCQI)
JGAP・SAGP審査員を歴任。

二十年以上にわたり茶道の稽古を続ける。

現在は、茶業、茶道、植物療法の実践を行き来しながら、茶を研究している。得られた理解を、教育や茶の設計、新しい活用へつなげる活動に取り組んでいる。その中心には、「一服の茶を飲むとき、人に何が起きているのか」という問いがある。

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表記:萩村 健(はぎむら けん)/Ken Hagimura
肩書き:茶師・フィトテラピスト/Japanese Tea Taster & Blender / Phytotherapist

プロフィール(100字)
茶師・フィトテラピスト。株式会社まるは茶業、株式会社MARUHA AGRI代表取締役社長。三重県四日市市水沢に育ち、茶業に入って二十六年。茶業、茶道、植物療法を行き来しながら、「一服の茶を飲むとき、人に何が起きているのか」を探究している。

プロフィール(200字)
茶師・AMPP認定メディカルフィトテラピスト。株式会社まるは茶業、株式会社MARUHA AGRI代表取締役社長。三重県四日市市水沢に育ち、茶業に入って二十六年。契約栽培から加工、ブレンド、品質保証、輸出まで、日本茶の生産から流通に携わる。二十年以上茶道の稽古を続け、植物療法を学ぶ。「一服の茶を飲むとき、人に何が起きているのか」という問いを軸に、茶を研究している。伊勢茶スマート栽培協議会 会長。

Profile updated 2026